今回ご紹介するのは、聖イサアク聖堂(Исаакиевский собор)。
ピョートル大帝時代創建の聖堂で、名前は大帝の守護聖人”イサアク・ダルマツキー”から取ったもの。現在の建物(1818~1858に再建)は、いかにもビザンティンっぽい堂々たる構えです。「モスクワは第三のローマである」を全力で主張してます(笑)(いや、ここモスクワじゃないし、設計したのフランス人だけど)
最寄り駅は、アドミラルチェーイスカヤ(Адмиралтейская)。名前から何となくピンと来るかと思いますが、旧海軍省のすぐ側にあります。「海軍造船所関係者が大挙してペトロパヴロフスク聖堂まで行くのは無駄だよね」ってことで作ったそうな。…(さすがはピョートルさん、合理的や) ※ペトロパヴロフスク聖堂に関する記事はコチラ。
というわけで前置きが長くなりました。それでは最寄り駅からスタートしましょう。
※このページの写真は、クリックすると大きなサイズで表示されます。
まずは、地下鉄のアドミラルチェーイスカヤ(Адмиралтейская)駅。ここは、エルミタージュ美術館の最寄り駅でもあります。ちなみに、あんまり歩きたくない方にはバスという手もあります。
↑こんな街並みを眺めながら、マラヤマルスカヤ通り(Малая Морская улица)を500メートル程南西方向に歩いてくと―――
ドーンと聖堂が現れます。
観光地らしく、前にはこんなものも(笑)
チケット売り場は外にあります。
ここは結構風が強く、自分はチケットを聖堂入り口のバリケート内に持って行かれるという悲劇に見舞われました(笑)(とりあえず、中にいる人に取ってもらいましたが…)
入り口横の大扉の装飾はこんな感じ。
彫刻家I.P.ヴィタリの作品で、中段右が天使ミカエル、左がアレクサンドル・ネフスキー大公です。
アレクサンドル・ネフスキーさんは、ピョートルさんより400年も前の人で、当時治めていたのはウラジーミル大公国。モスクワ、ウラジーミル近辺の、ヨーロッパ・ロシアのごく一部です。
当時はキエフ大公国の末裔国家群全部合わせても、ウラル山脈の西側全体をしきれていない状態で、ソレ考えるとどんだけ膨張(つまりは侵略)しだんた?という話ですよね(笑)
扉の前に立ったら、上を見上げるのもお忘れなく。
中はハギア・ソフィア聖堂(アヤソフィア)をサン・ピエトロ大聖堂風に魔改造した感じ?(ゴージャズっぷりが(笑))
イコノスタシス(神品の置かれた至聖所と人々が祈りを捧げる聖所を隔てる、イコンの描かれた壁)と至聖所も飾り立てられてます。
柱に使われているのはロシア(ウラル)特産品の孔雀石。ちょっと自慢げです(笑)
中央の二本はバダフシャン産の天藍石です。青と緑という滅茶苦茶な組み合わせですが、日本人的には神社仏閣で極彩色見慣れてるので、あんまり違和感覚えませんね。
ちなみに、青入れたのは「聖母マリアのイメージカラーだから」でしょうか?
イコンというとルブリョーフが描いたような、のっぺりと表情のない、デッサン狂ってね?的な絵を連想しますが、ここのイコンは奇麗めです。そして、ビザンティンの末裔らしく(笑)モザイク。
こちらは、聖エカテリーナの宝座のイコノスタシス。至聖所の向かって右にあります。
スペインのセビリア大聖堂の衝立なんかを見ると(いや、TVでしか見てないけど(笑))、カトリックって尋常じゃねぇな…と思うわけですが、装飾過多ではロシア正教も負けていませんね。
「うわー」と口開けて見上げ、「『美しい』は正義だよね」と思ったりするわけですが(笑)、一方で、トルストイのこんな言葉なんかも浮かんできます。↓
「イエスは、このような無意味な言葉の羅列や、パンと葡萄酒を前にした教師たる司祭の冒涜的な魔術を禁じたばかりでなく、一部の人々が他の人々を師と呼ぶことさえはっきりと禁じ、会堂内での祈祷を禁じて、各人が孤独の中で祈祷することを命じられたのであった。いや、イエスは会堂そのものをも禁じて、自分は会堂を破壊するために来たのだといわれ、祈祷は会堂のなかではなく、各人の心と真実のなかで行われるべきものであるといわれた。(中略)そこで行われたすべてのことが、キリストの名においてなされながらも、実際は当のキリストに対する最大の冒漬であり、愚弄であったのである。司祭が捧げもってみんなに接吻させた、それぞれの先端に七宝のメダルのついた金の十字架こそ、今キリストの名において行われたようなことを禁じようとしたために、キリストが処刑されたほかならぬその礫の柱をかたどったものにはかならなかったが、誰ひとりとしてそんなことは思い浮べなかった」トルストイ著(木村浩訳)『復活』より
最近、ロシアのニュースではキリル総主教の顔を結構頻繁に見かけ(ウクライナ正教会の反乱ネタだけでなく(笑))、プーチンが宗教行事に参加している姿も報じられていますが、国をまとめる最も有効なツールが『既存宗教まんま復活』っていうのはちょっと寂しい気がしますね。(だからってフーコーの振り子吊るしたり、博物館にしたりするのがイイってわけじゃないですよ?(笑))
閑話休題。再び外。
入場時間が過ぎると、辺りは閑散としてこんな感じ。
また駅に帰ってまいりました。
こんなふうに並びたくない方、自販機にお金を飲まれたくない方には、パダロージニク(Подорожник)という地下鉄・バス共通パスをお勧めします。買い方、使い方についてはコチラをご覧ください。
エスカレーターは、モスクワと同じく長いです。(川の下を通すから深く潜らなきゃならないらしい…)
そして、片側空けで人がガンガン歩くのも日本と同じ。下に怖そうな監視員が控えてるのだけが違いますね(笑)
それにしても、あの方々、なんでみんなあんなに怖そうなんでしょうか?
なお、モスクワ地下鉄のスバラシすぎる内装につきましては、こちらをご覧ください。↓
ロシア旅行記:モスクワ地下鉄コムソモーリスカヤ駅
ロシア旅行記:モスクワ地下鉄革命広場駅他
記事冒頭でピョートルさんについてちょっと触れたので、モスクワのピョートルさん像も上げておきます。
トレチャコフ美術館の新館から本館の方に向かって歩いていくと、左前方にコッチ向いた像が現れます。デカいです(笑)
ちなみにこのピョートルさん、ヒゲ税(ヒゲ生やすと税金取られる)で有名なオランダ・イギリスかぶれ―――というか、ロシアを西欧海洋大国並みの存在に押し上げようと頑張った方です。サンクトペテルブルクを作って、ここに遷都したのもこの人。当然イロイロと反発を食らい、一般民衆には「俺らのツァーリはドイツ人とすり替えられた!」とか何とか言われる始末。(まあ、「ブルク」って名前見ると、ドイツナイズされてるって思いますよね(笑))
「どんなに良い、必要なことであっても、新しいこととなると我が国の人々は強制なしに為そうとしない」と愚痴ったとか―――。(なんかこの台詞、他人ごとじゃない感じ)
というわけで、本日はこれにて。
次回は血の上の救世主教会です。(痛恨のクインジ見れなかった事件については、いつになったら書けるのか(笑))
同シリーズの前記事はこちら↓
ロシア旅行記:モスクワ地下鉄革命広場駅他~ロシア革命&美術&音楽の軽度オタがロシアを旅した話 その6
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