ドラマ『グッド・オーメンズ(Good Omens)シーズン1』ネタバレあり感想

聖書も予言者も信者も、ついでに現代の”環境教”(笑)の信者もまとめて茶化すモノスゴイ作品(笑)
いや、なんだかんだ言ってエゲレスって自由なんだなと実感しました。
あらすじについては、Wiki辺りで見ていただくとして(笑)、ここでは面白かったポイントを―――

聖書、魔女の予言書、現代のマスメディアは似たようなもの?

この作品、天使アジラフェル(マイケル・シーン )悪魔クロウリー(デイヴィッド・テナント)のバディものなんですが、裏主人公と言っていいのが現代の魔女=アナセマ・デヴァイス(アドリア・アルホナ)
400年前に魔女狩りで処刑されたアグネス・ナッターの子孫で、彼女が遺した『The Nice and Accurate Prophecies (素晴らしく正確な予言集)』なるものを子供の頃から暗唱させられ、必死でそれを読み解き、それに従って行動してきた方です。
ちなみにこの予言書、「食べられないリンゴに投資しろ」だの「ベータマックスは買うな」だの、もうホントアホらしいほどに正確なんです。まあベータマックスはともかく(笑)「Apple株で一山当てた」的なことが続けば、子孫はああなるわなという…。

で、このアナセマさん、似たようなことが書いてある雑誌も鵜呑みにし、クジラは取っちゃダメ系環境保護思想にもハマり、近所の子達にそれを広めたりもしています。

そんな彼女の元にやってきたのが、かつてアグネスを処刑した魔女狩り軍少佐の子孫、ニュートン・パルシファー(ジャック・ホワイトホール)
ぶっちゃけ、とっても冴えない陰キャさんなんですが、彼女にとって予言は絶対。予言通りに現れた彼を、予言通りにお迎え(笑)します。
事が済んだ(←ここで何があったか察してください)後、パルシファーは反キリストを見つけたらどうするのかと彼女に訊ねるのですが、彼女は分からないと答えます。
なぜなら予言に指示がないから

さすがにこの答えには、ヘタレのパルシファーも突っ込みます。(“回数”に至るまで予言に従っただけだと知って、さすがにショックだったのか…(笑))
Don’t you ever just do things for yourself?(自分で決断してやってみないの?)”
You can’t let a 400-year-old witch tell you what to do.(400年前の魔女を頼りにはできないよ)”

それに対して、彼女はこう答えます。
I’ve spent my whole life trying to figure out what Agnes wanted me to do. And she’s never failed me. Sometimes I fail her(アグネスがして欲しいと望んだことを理解するためだけに生きてきたの。今まで一度だって、彼女の予言に裏切られたことはないわ。逆はあっても)”

いや、これってもう聖書を読み解くことだけに必死になってた神学者と変わりませんよね。
魔女狩りでは、薬草や占い、民間療法など、“教会に頼らず、自助努力で何とかする”系テクを持った人たちが大勢犠牲になったという話を聞きますが、ソレ考えると、どうなのよという感じです。

予言者、聖職者は神の代弁者?

この映画、返す刀で、暗にこういう↑人達もコケにしてます。(気のせい?)

ハルマゲドンを止めたいアジラフェルは、なんとか神と直談判しようとします。ちなみに、なぜあの悪魔召喚っぽい儀式で、神が呼び出せると考えたのかはナゾです(笑)
そして現れたのが、なんだかエラソーな爺さん。
彼は”To speak to me is to speak to God(私に話すことは、神に話すことと同じである)”と言いますが…ホントにそうなの?(笑)

かつて全方位に喧嘩売ってた(「隠れて」ですけど(笑))アダム・ヴァイスハウプトさん(イルミナティの創始者と言われる方)は、「市民の道徳上の内的価値についての憂慮は宗教および宗教の代表者に委ねられ、そしてあらゆる時代の歴史が証明するのは、人間のあらゆる行動のもととなる最も高貴な原動力がいかに悪用されてきたか」とかナントカ言ってらっしゃいましたが、実際は無自覚にこれをやらかしてる人が多いような気がします。
無自覚に崇め奉ってつけ上がらせないようにするのが吉かと…。

現世を享楽する天使と悪魔

天使は踊らないそうですが(初めて知ったわ(笑))、アジラフェルは踊ります。寿司屋の親父と流暢な日本語で語るわ、クレープ食べに革命期のパリに行って殺されかけるわ、グルメについてもガチです。
クロウリーも、カーマニアでヴェルヴェット・アンダーグラウンド好き。仲間の悪魔に「楽しみ過ぎだろ」と言われる始末(笑)

この二人、役割的にはカバラ方面のラジエルとか、ギリシャ神話方面のプロメテウスとか、グノーシス方面のエバを唆した蛇ルシファー的なイメージで、一歩間違えると、上から目線の同情・啓蒙系キャラになりそうなんですが、あの俗っぽく現世を愛してる感があるために、すんごい可愛いキャラに仕上がってます。

ちなみにアジラフェルは、「炎の剣渡されて木を守ってた」という設定的にはケルビム(これは階級名という話も)、本人の言によれば(神を召喚しようと試みたところで自己紹介してます)名前はメタトロンさんになるわけですが、メタトロンさんは元人間(エノク)という話もあるので、アジラフェルの設定とはズレてる気がします。ネタバレにならないように、わざといろんなキャラごちゃ混ぜにしたんでしょうか。
なお、メタトロンとサンダルフォンは兄弟だったとか…。似てねぇ(いや、だから俳優の顔で語られても(笑))

ジムに通ってランニングしてキラリ笑顔系男のウザさは異常

ガブリエルです(笑)
まあ自分も筋トレしてるんで、あんまり言えませんけど、世間一般に良いと認められてることを、大して考えもなし一通りこなしてる人の笑顔ってのは、なんかウソくさい…(笑)
でもまあこの人は、悪魔の助太刀に「ほら、彼女もこう言ってる」みたいに親指立てたり、炎の中に突っ込むアジラフェル見て思わず痛そうな顔したり、そこはかとなく愛らしい小物感があって憎めません。

ちなみに、笑顔と言えばアメリカ外交官の妻の「たとえ引き攣ってても笑うのが使命!」っぷりには笑いました。(数秒ごとに、両極端のテンプレ思想の間を行き来する夫にも…(笑))

一応、この映画のメッセージを真面目に考えてみる

ぶっちゃけ、このアジラフェルの台詞に尽きると思います。(尽きすぎて「シーズン2どうすんだ?」って気もします(笑))↓

So people can make choices. That’s what being human means(人間であるってことは、選択できるってことなんだ)”
Our job as as angels should be to keep all this working so they can make choices(天使の仕事は、人間が選択できるようにすることだろ)”

I was scared that you’d be Hell incarnate. I hoped you’d be Heaven incarnate. But you’re not either of those things. You’re much better. You’re human incarnate(君が悪魔にならなければいいと思い、天使のようになって欲しいと願っていた。でも、君はどちらでもなかった。君はもっと素晴らしい。君は人間だ)”

聖書の―――とくに旧約聖書の神様というのは、どうしても「何も考えずに、俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ」的な印象を受けてしまいます。
イサクの燔祭とか、ぶっちゃけ、アレを正しいとするのは正気の沙汰とは思えない。
「善悪を知る木の実を食べたことが原罪になる」というのも、「神は、人間が自らの意志で食べないことを選択するのを期待していた。それそこが善悪を知ること」というのが王道の解釈なんでしょうけど、自分を「妬む神」とか言っちゃってる辺りでもう「俺の命令を軽んじるとは…」と腹立ててるように見えちゃうんですよね。
そもそも、命じられたことに唯々諾々と従うのが、果たして善なのかという話。(まあ勿論、約束したなら守らなきゃなりませんけど…)

でも、アジラフェルは、どこまでも人間が自由意志によって選択することが重要だと言うのです。
反キリスト=アダム・ヤング(サム・テイラー・バック)は、アナセマに吹き込まれたあれやこれやで狂暴な正義マンになったり、友達に見捨てられて寂しいボクになったり、世界征服するぜと息巻いてみたり、脅されても「そんなの興味ない」と断言してみたり、とにかく振れ幅が大きい
そんな彼に、アジラフェルは、天使より素晴らしいと言うのです。

いろんなものに乗せられたり、ハマったりしながらも、疑うこと、悩むこと、捨てること、新しい何かを探すことを止めないからこそ、人間は、天使や悪魔も思いも寄らないことをしでかす可能性を秘めてるんだと思います。
「何かを正しいと仮定して試してみる」というのは、批評家気取りで何もしないより遥かにスバラシイ。
ただ、「これはより良い答えに辿り着くためのステップに過ぎない」という気持ちを忘れてしまうと、小さな成功が「違う考えを持つ人達をぶん殴るだけ」という結果に終わってしまうことも…。

現代にもあらゆる分野の信者がいますが、“論者”が”信者”になってしまわないよう気を付けたいですね。

全ては大いなる計画の内?

クロウリーは人に知恵を与え、アジラフェルは人に炎の剣を与え、反キリスト=少年アダムは最終的に「ハルマゲドンを起こさない」という選択をします。
これは、“大いなる計画”に沿ったものだったのか、神も予想しなかった事態なのか、それとも全ては生きとし生けるものの集合意識が成せる業だったのか。
そして、神も予想しなかった事態であるなら、それを神が喜んでいるのか悲しんでいるのか。
この辺りは、シーズン1では全く語られていません。

でも、あの皮肉全開で飛ばしてる感じを見ると、全部人間が作り出したものってオチになりそうな気も…(笑)

まあ、どっちにしろ知りようがない”grand plan”のことなんか気にしてもしょうがない。
クロウリーだって、あれだけ神に健全な反抗しておきながら、なんで”grand plan”を教えてくれなんて言うのかナゾです。神の思惑なんてあれこれ考えず、自分が正しいと思うことを試してみりゃいいのに(笑)

余談ですが、この映画を見て、昔ものすごくハマったSF作家、ロジャー・ゼラズニイ(Roger Zelazny)の『伝道の書に捧げる薔薇(A Rose for Ecclesiastes)』を思い出しました。↓
It is our blasphemy which has made us great, and will sustain us, and which the gods secretly admire in us. All the truly sacred names of God are blasphemous things to speak!(我々を偉大なものに仕立て、また、これからも我々を支えてゆくものは我々の神を恐れぬ言動なのだ。そして、神もわれわれの中にあるそれを密かに愛でているのだ。すべての聖なる神の名は、神をも恐れぬ物事の上に語られるのだ)”

ロジャー・ゼラズニイ(Roger Zelazny)の『伝道の書に捧げる薔薇(A Rose for Ecclesiastes)』

とりあえず、こういう映画が出てくるあたり、多くの人にとってそろそろ神のイメージが根本的に変わる時期に来ているのかもしれません。

27 Replies to “ドラマ『グッド・オーメンズ(Good Omens)シーズン1』ネタバレあり感想”

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