アンゲラ・メルケルは過ちを犯したのか?→極めて重大な過ちを犯した(プーチン)

NHKの記事『G20を前に プーチン大統領「リベラルの理念は時代遅れ」』の元ネタが、ロシア大統領のホームページにあったので、読んでみました。
EUのトゥスク大統領が意図的に論点ずらした反応をしていたようですが(笑)、これは、ペンス副大統領の新『鉄のカーテン』演説と並ぶほど、大きな”時代の変化”を感じさせるインタビューだったと思います。(クルツ元首相の「メルケルさん、あんたの『もっと来て』の所為だろうが!」発言とはインパクトが違う…)

ほぼインタビュー全文が載ってるのがココ↓ 上が英語版、下がロシア語版です。
Interview with The Financial Times
Интервью газете The Financial Times

ここには動画もあります。
Vladimir Putin says liberalism has ‘become obsolete’

では、問題の箇所を読んでみましょう。

アンゲラ・メルケルは過ちを犯したのか

注目ポイントは、「Ангела Меркель допустила ошибку?(アンゲラ・メルケルは過ちを犯したのか)」という質問に対する答えです。

“Кардинальную ошибку. Вот сейчас можно того же Трампа критиковать сколько угодно за его желание построить стену между Мексикой и США. Может быть, это излишне, не знаю. Наверное, может быть, я не спорю. Но ведь что‑то он должен делать с этим потоком мигрантов, с потоком наркотиков он что‑то делать должен?”

極めて重大な過ちを犯しました。『メキシコとアメリカ合衆国の間に壁を作る』というトランプを批判することは出来るでしょう。実際、それは不必要かもしれない。私にはよく分かりませんが…。しかし結局のところ、彼は移民の流れに対し、何かをしなければならないのでは? 麻薬の流れについてもです」

“Никто же ничего не делает. Это плохо, это плохо, но скажите: что хорошо тогда? что надо делать? Никто же ничего не предлагает. Я сейчас не говорю, что нужна стена или нужно на 5 процентов ежегодно повышать тарифы в экономических отношениях с Мексикой, я так не утверждаю, но что‑то надо [делать], и он хотя бы что‑то ищет”

「誰も何の手も打っていません。これは悪い状態です。悪いのですが…教えてください。それでは、何が良いのですか? 何をすべきなのでしょうか? 誰も何も提案していません。私はなにも、壁が必要だとか、メキシコとの間の関税を年5%引き上げる必要があるとか、そういうことを言っているのではありません。しかし、何かをしなければなりません。そして、少なくとも、彼は何をすべきか探しているのです」

リベラリズムの信奉者は、問題の存在を認めない

“А эта либеральная идея, сейчас не говорю о носителях этой идеи, но носители ничего не делают. Говорят, что так надо, так хорошо. А что хорошего? Им хорошо, они сидят в удобных кабинетах, а тем, кто сталкивается с этим напрямую каждый день в Техасе или во Флориде, – им не очень, у них свои проблемы будут возникать. О них кто подумает?”

リベラリズムの信奉者は、何もしません。彼らは、上手くいっていると言っている。何が上手くいっているんでしょう? 彼らは快適な部屋に座っていますが、テキサスやフロリダで毎日この問題に直面している人々は違う。彼らは問題を抱えています。誰がその問題について考えているのですか?」

移民の権利は特例的に”どこまでも”守られるべきではない

“Так же и в Европе. Я со многими коллегами разговаривал на этот счёт, но никто не говорит. Говорят, что нет, мы не можем более жёсткую политику проводить потому‑то и потому‑то. Почему? Потому, не знаю почему. Закон такой. Ну поменяйте закон”

ヨーロッパでも同じ事態に陥っています。私は、多くの仲間とこれについて話しましたが、誰も(解決策を)話そうとしません。より厳格な政策は取れないと言う。何故? 私には何故か分かりません。法律はそうなっている? だったら、法律を変えればいいじゃないですか

※中略

“Где‑то ужесточаем законодательство: если приехал в страну, пожалуйста, уважай законы страны, её обычаи, культуру и так далее”
“То есть для нас тоже всё непросто, но мы делаем, хотя бы стараемся, работаем в этом направлении. Но эта либеральная идея предполагает, что вообще ничего не надо делать. Убивай, грабь, насилуй – тебе ничего, потому что ты мигрант, надо защищать твои права. Какие права? Нарушил – получи наказание за это”

「私達は、法律を厳しくしています。国に来たら、その国の法律、習慣、文化を尊重するように」
「私達にとっても、すべてが簡単というわけではありませんが、少なくともこの方向で努力しています。 しかし、リベラリズムの考え方は、何も対策をする必要はないと言っている。何をしても移住者の権利は保護されるべきだと(※「何をしても」の具体的な内容は、記載自粛)。どんな権利ですか? 法律に違反すれば、罰を受けなければなりません」

ロシアには言われたくないけれど…(その1)

ロシアは、EUが分裂してくれた方が嬉しいわけですから、この発言を「ぐう正…」と言いたくない気持ちは当然あります。
でも、リベラリズムの信奉者が問題の存在を認めようとせず、少なくとも一部の国民の利益を損ねているというのは事実でしょう。

政府がどんなに「お願い」したところで、求人に対して十分すぎる働き手が集まり、しかも労働者側に遊んで暮らすだけの余裕がなければ、給与はほぼ最低賃金に張り付きます。職業訓練中の難民や、脛に傷のある不法移民であれば、最低賃金未満で一般国民より安く使える可能性もある。
企業は慈善活動をやっているわけではありませんから、経営者が移民を欲しがるのは当然のことです。(人海戦術に安住すればイノベーションで後れを取るわけですが、短期の業績さえ残せば良い雇われ社長や、売り逃げる気満々な株主にとっちゃあ、そんなことはどうでもいい)

移民の集団が女性を襲う事件が起きたドイツでは、移民の増加によって、女性が肌を出して歩くことのリスクが高まったのも確かでしょう。
公共サービスは多言語対応を迫られ、会社の同僚や中間管理職には、お祈りの時間の確保や、ハラル破りの食事を食べさせないよう、配慮が迫られます。
日本の場合はさらに、世界標準な(?)人々が多く流入してきただけで、従来の『平和ボケ仕様な社会システム』が通用しなくなり、膨大なコストがかかる可能性もあります。
デメリットは確かに存在するわけです。

勿論、メリットも存在します。
問題なのは、メリットとデメリットの両方について語ろうとせず、問題をなかったことにする態度です。(ケルンで起きた集団性暴行事件をマスコミが当初報じなかったような…)

欧米の政治家やメディアは、移民受け入れに反対する人々を「無学で扇動に乗りやすい差別主義医者」とあからさまに蔑視してきました。ZDFの報道などは、本当に酷いものです。まともに話を聞く価値すらないという感じです。
しかし、こういう態度が、彼らを先鋭化させ、国を二分し、プーチンの思うツボにはまっていることに、そろそろ気付くべきではないでしょうか。

ロシアには言われたくないけれど…(その2)

ぶっちゃけ、ロシアのTVを見ていると、報道の自由度はかなり低いと思います。
EUのトゥスク大統領が、プーチンのこの発言について民主主義の否定だみたいなことを言ってましたが、相手がああいう国だと、妙にこの発言が説得力を持ってしまいます。

ですが、旧西側諸国が考えるような民主主義国家は、自由、平等、遵法精神を大切にする国民が多数を占めなければ成立しません。この辺りを考慮すると、トゥスク氏の反論はひどく頓珍漢に思えてきます。

他の宗教を認めない者、法律より聖典や宗教指導者の言葉に従う者、男女同権に反対する者を受け入れ、これが出生率の高さによって多数派になったらどうでしょう?
旧先進国の国民は、「教育レベルが上がれば、みんな我々のような価値観を持つようになる筈」という非常に不遜な考えを持っているようですが、現状を見れば、その望みは薄そうです。
我々がイメージする民主主義を守ろうとするなら、あまりにもかけ離れた価値観を持つ人々を大量に受け入れるのは危険でしょう。

それぞれの文化圏の人々が、自身のままで居られる自身の国で暮らせるよう、手助けをするのが、お互いの幸せの為という気がします。