舞台『WASABEATS』(2016年5月21〜22日 Zeppブルーシアター六本木)レポ


前回(ここをクリックすると開く)は、ラクガキ1枚のみでスミマセンでした。
一応今回が本レポです。
あえてパンフを読まずに書いていますので、制作者の意図に沿わない内容も多々含まれますことをご了承ください。
それではまいります。

ほの暗いステージに、最初に登場したのは皆川まゆむさん。この後のストーリーを象徴的に表現しているようにも、ダンスを始める人(涼平氏含め)が、『どんな心の状態から、何を思ってダンスを始めたか』を表現しているようにも見えるダンスでした。先日は金森穣とか言ってしまいましたが(笑)、いわゆるコンテンポラリー系の動き&演出です。ベジャールとか山海塾(笑)とか雲門舞集とか好きな人は、おそらくドはまり。観過ごした方はぜひDVDで。

続いて他のダンサーさん方も登場し、最後に舞台の奥の方から涼平氏登場。警官コスプレ…じゃなかった警官役です(笑)
最初は空ろな表情で中空を見つめているのですが、踊っている人達に目を留めて目が覚めたような表情になり、それから、一人一人をすごく楽しそうに観て回ります。パトロールか『プライベートでフラっと』かは不明ですが、クラブで偶然ガチな人達を見つけてハマッてしまったというパターンでしょうか?(笑)(いや、夢の中で回想してるんじゃなくて、完全なる妄想って線もありますね)

次の場面は職場(派出所)。冒頭の回想シーンが夢の中で再現されている警官A(涼平)は、実に楽しそうな顔で寝ています。
そこに登場した先輩警官B(丞威さん)。いきなり机をぶっ叩いて警官A(涼平)を起こします。当然です(笑)
警官Aは飛び起き、彼を怒鳴りつけた警官Bはそのまま鏡の前まで歩いていき、変なポーズを取り始めます。結構ナルです。
しばらくすると先輩警官Bは再び出て行き、残された警官Aは、まだ夢の余韻を引き摺っているのか、いきなり立ち上がって踊り始め・・・・たところにいきなり先輩警官Bが再登場。警官Aは流れるように通常歩行に入り、何食わぬ顔で着席(笑)↓

絵をクリックすると拡大

先輩警官Bは、何をしていたのか問い質そうとしますが、警官Aはシラを切り通します。

とりあえず納得した警官Bは、警官Aにパトロールを命じます。しかし、警官Aは路上で踊っている人達を見つけて『教えて』攻撃(←世間では職権濫用とも言う)
楽しいひと時を過ごしすぎて、帰った後、また先輩警官Bにこっぴどく怒られます。当然です。

絵をクリックすると拡大

そんな先輩警官B、実は彼もダンスオタだったりします。
就業後、派っ手な格好でポーズを決める姿を、まるで不審者を見るような目で物陰から見ていた警官Aは、さっそく彼の追尾開始。

絵をクリックすると拡大

着いたところは、とあるクラブ。
警官Aは、「なんだー、ダンスやってたんだー」とからかい気味に、でもひどく嬉しげに近寄っていこうとしますが、先輩警官Bは必死で逃げ、ついに逃げ切ります。
警官Aはしょんぼり。(しょんぼりすぎるだろ(笑))↓

絵をクリックすると拡大

ちなみにこの場面で、警官Aは青年D(橋本汰斗さん)に警察手帳をスられます。間抜けですね。

そして再び派出所の場面。おエライさん登場です。(このキャストは日替わりです。ここはスカした感じの西島氏で想像してください(笑))
命じられたのは、風営法改正に伴う取締りの強化。
ちなみに、このおエライさんのポジション、ものすごく謎です(笑)
初めは本部のキャリア組かと思ってたのですが、後で署名は受け取るわ、国会の委員会で質問するわ…。地区選出の国会議員か何かなんでしょうか? だとしたら、議員が巡査に命令なんてしていいのか?(笑) いや、もしかしたら総務大臣…?(←ないない)
とりあえずこのおエライさん、偉そうに指示をした後、偉そうな歩き方で去って行・・・くかと思いきや、舞台袖手前でなぜかスキップ(笑)
これは絶対、『オレも昔ダンスやってて、今回の件はすっごく不満なんだけど、立場上言えないんだよね』な伏線だ!と思っていたら、後の流れを見るとどうもそうじゃなかったらしいです。(なんという肩透かし…)

通達の内容を見て、青くなった先輩警官B(丞威さん)。街でクラブ経営者の友人E(植木豪さん)に会うと、彼に風営法の改正ポイントを説明し始めます。
ここで、なぜか友人Eと一緒に説明の内容をダンスで表現し始める警官A(涼平)。

絵をクリックすると拡大

ここの動きは相当笑えますので、DVDが出たら是非チェックしてみてください。

そして後日、パトロールで友人Eの店に来た警官A〜C。友人Eは指示に従わずに先輩警官Bを殴り、警官Aは現場で警察手帳をスられた相手を見つけて二重の捕り物が始まります。そして、結局二人は拘置所へ…。

警官Aは、返ってきた警察手帳に頬ずりして喜びます。(←あなたいったい幾つなんですか?(笑))
捕まった友人Eは、ロボットダンスを教える振り(というか結構本気で教えてますが)して、檻から出してもらい、観客が操作する電動ドライバ音に合わせて警官Aと二人でアドリブダンス(←これが結構笑えました)。
それが終わると、応用編のダンスを見せ、警官Aが躍ってる間に逃走。
とりあえず人を信用しすぎる警官Aは、警官には向いてないっぽいです(笑)

一方、スリで捕まった青年Dは、調書だけ取られて解放。
その後、ラジカセでマイケルジャクソンしてるところ(笑)に、以前サイフをスろうとして失敗したダンサーF(TAKASHIさん)が登場します。
青年Dは逃げようとしますが、ダンス心刺激されまくりのダンサーFは「そんなこたどうでもいい」モード。「その体なら、こういうダンスやるべき」と手本を見せ(右手手袋じゃないのは、利き手にしちゃうと危険だから?)、テンション上がった青年Dは、ダンサーFとすっかり意気投合。
そんな中でも青年D、実はダンサーFのサイフをくすねていたりしたのですが、結局は「オレ、教えてくれた仲間に何やってんの?」的感覚に襲われて、財布を路上に投げ捨て、財布が落ちていると教えます。
それを見ていた警官A(涼平)、ダンサーFが去ると、嬉しそうに青年Dに近づいていきますが、青年Dは顔を見た途端、逃げにかかります。しかし、警官Aは「いや、そうじゃない」と宥め、ダンスを教えてくれと頼みます。
初めは乗り気ではなかった青年Dですが、ほんの少し教えたダンスを完コピしてきた警官Aに驚き、本気で教え始めます。

そして、先輩警官B(丞威さん)はといえば、その後も色々あって、友人E(植木豪さん)とは絶縁状態。鏡の前で練習しながら、幻見ちゃうほど気に病んでます。
警察というのは、法律を守らせ、社会秩序を維持する為の暴力装置なわけで、「違法行為を取り締まらない」と決めた瞬間に、警官でいることは出来なくなります。というわけで、彼が悩むのも分かるのですが、ここまで悲壮感漂っちゃうのは、「法は守らなければならないが、法は人が決めたものであって、変えること出来る」という視点が抜けていることも理由の一つで、その根っこは、自分がダンスをしていることを必死に隠していたあの姿勢にあるような気もしました。青年Dのような素行不良のダンス青年が相当数居て、それがゆえに世間には認められることはないだろうと無意識下で考えているんでしょうか。

一方、警官A(涼平)は、この件に関して非常に現実的な対応をします。
まずはダンスを取り巻く情況を調査し、署名活動が始まっていることを知るや、それを友人E(植木豪さん)に伝えます。
友人Eは、いったんは「そんなことをしても無駄だ」と投げ捨てますが、最後は一念発起して署名活動に取り組みます。素行の悪い客に、注意も始めました、

そして集まった署名。例のおエラいさんのところに持っていくのですが、おエライさんは受け取りはしたものの、彼らの言うことなど聞く気なし。
後日その署名を、警官AとBに腹立たしげに突っ返します。
結果を報告に行った警官A〜Cに、友人Eは「これ以上、どうすりゃいいんだ?」と詰め寄りますが、先輩警官B(丞威さん)は何も言えません。その場に居た客が次々と挑戦的に踊ってみせますが、先輩警官Bは動かず。
そんな中、突然警官A(涼平)が意を決したように踊り出します。
やがてそれを応援するようにDJも再開。警官Cまで踊り出し、最後は先輩警官Bも輪に入ります。
そこへおエライさん登場。
先輩警官Bは警帽と警察手帳を返し、筋を通します。警官Aは返された署名をもう一度渡し、去っていきます。

残されたおエライさんは、今のシーンを見て何か思うところがあったのか、国会の委員会でダンス規制を覆す活動を始めます。(例のスキップを伏線にして、署名を腹立たしげに付き返すシーンをなくせば、「オレも昔はダンスやってて、本当は力貸したかったんだけど選挙民の理解が得られないから無理だったんだ。でも、ここまで支持が広がっているなら…」で話が通ったんですけど、この流れだとちょっと突飛な感じがしますね)
そして、ついに法改正に至り、ラストは『ダンスは犯罪ではありません』ダンスで大団円・・・・というストーリーでした。


非常に楽しい舞台で、キャストについては、「これはベストキャスティングでしょう」というぐらい素晴らしかったです。
キャラも立っていましたし、それぞれの心情表現も上手かった。
ただ、問題としてメインに据えたのが『1時以降のダンス禁止』だったという点と、オチについては、正直どうなんだろうという感じでしたね。
この改正の最大の問題点は、「ダンス飲食営業が基本的に違法となったこと」、「営業許可を取れば深夜以外はOKだが、これにはさまざまな規制をクリアする必要があること」であり、次の問題は「ビリヤードが『スポーツである』として風営法の対象から外されたのに対し、ダンスだけが特別扱いされて規制の対象になったこと」ではないでしょうか?
普通の生活をしている人に、「1:00以降ダンスできないのがツラい。私たちと一緒に戦ってください」と言っても、おそらく「お前、ちゃんと働いてんのか?」「ちゃんと勉強してんのか?」で終わりでしょう。自分も昔はあの手の店に行ってましたが、終電に間に合うよう11:00頃には店を出てました。なぜなら月曜に響くから(笑)
早い時間はオサレしてスカして酒飲んでる連中ばっかりで、本気で踊ると何コイツみたいな顔されるとか、邪魔になるとか、店側としては深夜の売り上げがバカにならないとか色々あるかと思いますが、やっぱり一般の理解は得にくいように思います。
「ダンスパーティーすら違法」という部分をクローズアップした方が、分かりやすかったような気がしますね。

せっかく署名という正攻法で問題を解決しようとしたのに、個人的な情に訴えるオチの付け方もどうかなぁという感じでした。
例えば、現行法が及ばない独立国家の創設まで考えるなら、「悪法には全員で従わないようにしよう」という戦略はありだと思います。(ガンジーなども、『非暴力』という面ばかりがクローズアップされていますが、あの人は徹底的に法律違反をやって、英国の統治システムを機能不全に追い込もうとしましたよね)
ただ、友人Eの「友達なんだし、悪法だし、お目こぼししてくれてもいいんじゃないか?」とか、警官Aの「ここまでみんな努力したのだから、認めてくれてもいいんじゃないか」という姿勢は、やばり甘えじゃないかという気がします。
民主主義国家で自分の意見を通すには、一般的には、多数派になること、もしくは多数派に「かわいそうだ、なんとかしてやらなければ」と思ってもらえることが必要ですよね。もうちょっと多数派工作を頑張って欲しかったなというのが正直な感想です。

…と色々語ってしまいましたが、非常に楽しい舞台でした。ダンスがあるからこそ立ち直れる、前向きになれる、人と繋がれるという部分がストレートに伝わってきたのも良かった。
丞威さんのダンスもハンパない。(あの人、何がスゴイってあれだけの動きしてるのに、シューズの音が殆どしないんです)
観損ねたという方は是非DVDで!
涼平氏は、コミカルな動きと顔芸に完璧に開眼したようなので、次が楽しみです。

あ、私事ですが、w-inds.ツアーの東京国際フォーラム落ちました…。一般発売で頑張ってみますが、行かれる方は、是非ともレポよろしくお願いいたします。


2016年05月29日22:14更新
赤坂杳子